
漆板-siita-
- Ongoing
漆と木。天然素材のサーフボード・スケートボードブランド「漆板-siita-」。京都市京北町をベースに「工藝の森」を主宰する「一般社団法人パースペクティブ」の工房で、地元材やベアーズウッド(クマ剥ぎ材)、そしてウルシの木を使ってシェイプされた木製サーフボードに、堤淺吉漆店で漆塗りして完成する。その原点は、古代ハワイアンが乗っていた木製ロングボードAlaia(アライア)。世界的ウッドシェーパー、トム・ウェグナー氏と一緒に手がけた世界初の「漆アライア」は、私たちが漆を通して伝えたい「人と地球に優しいものづくり」の代名詞です。

環境不可の少ない「100%ナチュラルなサーフボードを作りたい」
その想いから生まれた「Urushi Alaia」
Alaiaはサーフボードの原点。
一本の木から制作され、シェイプや木の素材によって大きく乗り心地が変わる。
漆はアライアを海水から守るだけでなく、水と馴染むその塗膜は美しさと今までにない乗り味やスピードを生み出します。
その漆アライアから派生したブランド「漆板-siita-」は、できるだけ自然素材を用いて作られています。自然素材の力を引き出す職人の技術と地元材の利用。
私たちは漆の利用を広げ、ウルシの木の植樹の輪を広げていきたいと考えています。
ウルシの木が育った15年後を想像し、大切に育てられた樹液も木も葉も蝋も全てを大切に使いたい。ウルシの木は軽くて水に強い木です。ウルシの木の可能性を広げるためにも、ウルシの木を使ったサーフボードの制作にも挑戦しています。

コンセプト
山に学び、里で作り、海で遊ぶ。
海に育まれてきたサーフカルチャーも、辿ればそこに、山があり、里山がある。
Workshop
京都の奥山、京北・山国は、平安京の創設のための木材を供給するために拓かれた山里です。この地の木が、筏に組まれ、桂川を下り、京の文化を支えてきました。Siitaが工房を構えるのは、その桂川のほとり。築100年以上の古民家の農作業小屋を自分たちで改修し、小さな小さな工房を作りました。この山間の里の小さな工房に、世界中から海と木工を愛する人たちが集います。Siitaはここから、海と山をつなぐ私たちの物語を紡ぎます。
素材
漆 – 縄文から続く循環型資源
木の樹液から作られる漆は、日本では1万年以上もの間、防水・防錆塗料として、また接着剤として人々の暮らしの中にありました。木を植え、15年ほど育ててから樹液を採取し、その木が一生を終える前にまた次の世代の苗を育てます。そのような循環するモノづくりが、千年の都の文化を支えてきました。「循環」へのヒントは、伝統にありました。繊細な印象がある漆。実はその塗膜は車の塗装よりも硬いのです。水分を取り込んだまま硬化する不思議な特質により、人の肌によくなじみます。水と馴染みのいい(親水性が高い)その塗膜は水面での抵抗を最小限に抑え、加速を引き出します。漆は波と一つになるサーフボードにこそ、ふさわしい素材です。
桐 – 加工性と軽量性
Siitaのサーフボードで使用している木材の一つが桐です。桐は世界屈指の軽い木材であり、防水性にも優れています。加工しやすく、サーフボードの複雑な形状を精密にシェイプ出来る最高の木材です。かつ20年程度と成長が早い。かつては、女の子が生まれると庭に桐を植えて、その桐で作ったタンスを嫁入りの時に持たせる風習があり、漆と同じように桐は、日本人の生活の中で育てられてきました。初夏に鮮やかな紫色の花を咲かせる桐は古くから紋章として用いられ、日本人とは関係の深い木です。
杉 – 日本の隠れた宝
Siitaのサーフボードで使用しているもう一つの木材は杉です。学名は“日本の隠れた宝”を意味するCryptomeria japonica。戦後復興を支えるために日本中で大量に植えられたものの、1980年代以降安い外国の木材に押され、放置されている森も多いと言います。Siitaの工房がある京北も例外ではありません。人が関わることで新陳代謝を繰り返してきた日本の森は、伐って使ってまた植えるというサイクルを必要としています。杉は桐よりすこし重みがあり、ドライブ感を出したいロングボードを作るのにちょうどいい。そして何より木目が美しい。
siitaのサーフボードにはクマに傷つけられ価値を失った杉を用い、山での循環を目指しています。(ベアーズウッドプロジェクト)


技術
漆板-siita-のシェイパー・ホドリゴ松田は、20年近く木製のサーフボードを作り続ける職人。また漆精製職人の堤卓也は、明治時代から100年以上続く漆屋、堤淺吉漆店の4代目です。
素材の力を引き出すように、一本一本の木と対話し、木の声を聞くようにして削り出すホドリゴのシェイピング技術と、その日の気温や湿度などで生き物のように変化する漆に合わせて作業を進める堤の知見が出会った時、その手仕事は、効率化のための機械化には到底置き換えられないクオリティを実現します。一方で、新技術を敬遠するのではなく、手仕事の品質を超えることが可能になるのであれば、最先端の技術も積極的に取り入れる姿勢で、常に仕上がりを探求していきます。