
堤淺吉漆店について
堤淺吉漆店は、明治42年に京都で創業した漆屋です。「漆を一滴も無駄にしない」──初代・堤淺吉の想いを継ぎ、変わりゆく時代の中で漆の新たな可能性を拓きながら、漆文化を未来へつないでいきます。
Our Vision
漆とは、アジアでのみ生息する「ウルシの木」から採取される自然の樹脂。10年以上の歳月をかけて育った木から、わずか牛乳瓶1本分しか採れない貴重な資源です。手塩にかけて育てた木から、漆掻きとよばれる職人が5ヶ月ほどかけて少しずつ採取します。
漆は、古くは約10,000年前、縄文時代から塗料や接着剤として使われてきました。わたしたちは創業以来、その一滴一滴を大切に精製し、職人のもとに届けてきました。しかし現在、便利さやスピードが優先される時代のなかで、漆の文化は衰退の危機に直面しています。今一度、素材としての漆の価値を伝え、植え育てて創るという自然とともにある暮らしを次の世代へとつなぎたい。漆の未来をつくる材料屋──それが、わたしたちが目指す堤淺吉漆店の姿です。
History
縄文時代から漆は日本人の生活の中にありました。堤淺吉漆店は、創業明治42年。それから今に至るまで110年余り。文化全体の歴史から見れば、まだまだ「新人」。先人から託された歴史の重みを感じながら、漆文化が現代、そして未来で、生き生きと枝を伸ばすために何ができるのかを考え続けています。
Our Thoughts
「漆を一滴も無駄にしてはならない」──初代・淺吉が口癖のように話していたこの言葉は、漆という素材への敬意、漆のおかげで生活できていることへの感謝の気持ちの表れです。1909年創業から今も、社訓として受け継がれています。
かつて私たち漆屋は、品質の良い漆を安定供給することだけに注力してきました。しかし、時代は変わり、現代社会において漆は衰退の一途を辿っています。
漆や工芸が私たちの生活とともにあった頃、漆器を作る職人さんは仕事に追われていました。各工房の漆を切らさないように、自転車に桶を山積みにして配達に回る日々。当時は、先々のことを考える必要も、そんな余裕もありませんでした。その後起こった、戦後の高度経済成長、バブル崩壊、そしてIT革命。
安く、早く、便利なモノが求められるようになり、漆や工芸は日常生活から姿を消していきました。大量生産、大量消費、使い捨ては当たり前。漆のあり方とは真逆の価値観が日常となった現代においては、10年先の未来ですら想像できません。昔と同じように注文を待っているだけでは、商いを続けていけないことは目に見えていました。
戦後から現在にかけて、漆の国内需要は恐ろしいスピードで減少しています。漆屋は、山と使い手の間で仕事をする存在です。漆の使用量が減ったことで、山々に育つ漆の木や漆掻き職人、彼らが使う道具までもが窮地に立たされ、テクノロジーが急速に進歩する裏側で、地球は傷つき、漆や伝統工芸の衰退が進んでいます。
今、漆屋である自分たちにできることは何か?まずは、伝えることから始めようと思いました。漆の素材としての魅力を。悲しい現状を。
私たちは日々漆を精製する中で、艶めかしく変化する漆の美しさや素材としての面白さに引き込まれています。
水分を持ったまま硬化する漆独特の塗膜は、人の肌に馴染み、使い込むほど味わい深い艶に育っていきます。愛着が湧き、大切に使う。使い込んで傷んでも、修復し、世代を超えて使い繋ぐ。ご先祖様を敬う。手を合わせる。素材を五感で感じる。昔は当たり前だった日本人らしさ。受け身でいても何も変わらない。自分たちも歩みを進めなければ。そんな想いから、2016年に「うるしのいっぽ」というプロジェクトををスタートさせました。
おかげさまで、たいへんな反響がありました。うれしかった。メディアにも取り上げられ、講演依頼なども増えました。でも、そのほとんどが漆や工芸関係の人からの反応だと、ある時気づいたのです。その輪の外にいる漆に触れたことのない人たちに、漆のことを知ってほしい。
2019年、漆の新しい価値観や可能性を発言するプロジェクト「BEYOND TRADITION」を立ち上げました。
「高級で扱いにくい」「特別なもの」といった漆のイメージを変えたかったのです。ジーンズや革製品のように、使い込むことで生まれる味わいを楽しんでほしい。若者にも響くかたちで、漆の魅力を伝えようと考えました。※は、人や地球に優しいサスティナブルな自然素材です。※を知ることで、環境問題にも関心を持ってもらいたい。
このような思いを語ると、日本だけでなく世界の人々が共感してくれました。私たちは少しずつ、漆の新しい可能性を実感できるようになっていきました。続けていくうちに、協力してくれる仲間も増えました。
いま私たちは、工芸という大きなものに向き合っています。
漆を軸に、循環型のモノづくりの拠点をつくり、さまざまな工芸素材の魅力を伝えたい。10年後、15年後を想像して木を植え、育て、つくる。
持続可能な森づくりとモノづくりを地域や行政、教育機関や企業と一緒に実現する。そのための活動を「工藝の森」と名づけ、大きな目標に向かって、歩み出しました。
漆は、日本の文化と歴史に深く根付いた宝です。漆を通じて人々がつながり、世代を超えて受け継がれる文化を創造する。そして、この美しい地球と共に歩む暮らしの価値を広く伝えていく。100年を超える歴史を誇りに、そして未来への責任を胸に、私たちは漆とともに歩み続けます。一滴の漆に込められた想いが、やがて大きな森となって広がっていくことを信じて。
Overview
株式会社 堤淺吉漆店
堤 卓也
〒600-8098 京都市下京区 間之町通松原上る稲荷町540番地
明治42年
日本産・中国産漆の精製卸・小売
漆工材料の卸・小売
三和漆工用研磨材発売元
漆産業省力化機器の販売
漆器及び漆器等木地販売
漆塗り・蒔絵等請負・漆製品OEM
オリジナル漆プロダクト開発、販売
ウルシの木植栽事業
漆芸専門ショップUnd.運営
漆芸教室「うるしの学校」主宰
見学・体験ツアー・各種ワークショップ
ホルベイン工業(株) 彩色絵具及び彩色材料の卸・小売
塗料の小売
塗装関連用具の小売
塗装設備・研磨設備の販売
全国漆業連合会 会員
京都漆器工芸協同組合 組合員
京都仏具漆工組合 組合員
日本漆工協会 会員
京都老舗の会 会員
社寺建造物美術協議会 賛助会員
NPO法人丹波漆 賛助会員
漆を科学する会 賛助会員
16人